幼馴染みの期限
「……あれ?何だっけ?……あー、そうだそうだ。ごめんごめん。向井くんの話をしてたんだよね。どうでもいいから忘れてたわ。私ね、樹里に謝らなくちゃいけないんだ。あのね、私の好きな人ね、向井くんじゃないんだ」
笑いながらサラッと向井くんへの気持ちを否定した美桜に驚きを隠せなかった。
……今、何て言った?…………向井くんの事、好きじゃないって…………言った?
私に……私だけにって話してくれた、あの日の告白まで全部……嘘だったの?
あまりのショックで美桜の名前すら呼べない私に、さらに畳み掛けるように美桜は話し出した。
「何で嘘ついたの?とか言わないでね。樹里だって向井くんが好きだって私に黙ってたんだよね。だったら樹里も嘘つきだよ。……どうして言ってくれなかったのー?それって何?余裕?私のほうが向井くんに好かれてるから、あんたなんて相手にされないのにって心の中では笑ってたんじゃないの?」
「……っ、そんなっ」
「そんな事ないって?……あるよね。私と違ってクラスは一緒だし『委員会の仕事手伝ってー』なんて可愛くお願いするの、樹里の得意技だもんね。向井くんもさ、わざわざ残っていっつも嬉しそうに手伝ってたよね」
「でもさー、そんなに簡単に両想いになったらつまんないでしょ?だってさ、樹里って何もしてないよね。なのに、好きな人と両想いになって付き合えるなんて、そんなのずるいでしょ。そうだよね?」
「だからね、私が壊してあげたんだよ」
ーー『壊してあげたんだよ』
ガツン、と頭を殴られたように衝撃で頭が真っ白になった。
頬を熱い滴が滑り落ちて、ポタリ、ポタリと制服のスカートを汚していく。