幼馴染みの期限
それから暫く沈黙が続いた。
酸素が足りない、もっと息を吸ってよ!と催促するように心臓の鼓動が激しさを増していく。
心臓が脈打つドクドクという音だけが響く中で、美桜がかすかに「……もう終わりだね」と口にしたのが聞こえた。
「……み、お?」
……終わり?
「でもさ、これで分かったよね?自分がどれだけ広海に守られてきたのかって。……もう見なくて済むかと思うとせいせいする」
「あんたなんて、広海と一緒じゃなきゃなんの価値もないくせに」
ーーその瞬間、
あんなに煩かった心臓が、ピタリと動きを止めたように何も音が聞こえなくなった。
ひゅ、と息を飲んだはずのその音さえも。
静寂を破ったのは、親友の……親友だと思っていた美桜の声だった。
「さよなら、樹里」
ブツッ、と電話の切れる音がした。
その瞬間、まるで自分を操っていた糸を断ち切られたように、自然と手の力が抜けてゴトンと床に携帯が落ちる鈍い音がした。
転がっていく携帯の画面に『通話終了』の文字が見えた。