幼馴染みの期限

ーーそこには、


いるはずだと思った美桜も、文芸部の皆も誰も居なかった。


しんと静まりかえった空間に、応える人の居ない私の声だけが虚しく響いた。



「……どうして……いないの?」



家にもいない、学校にも、部室にもいない。


なぜか、もうこのまま二度と逢えないような気がした。


いつも美桜と座っていた窓際の席にふらふらと近寄る。


「…………っ」


美桜じゃないのかもしれない。


でも見覚えのあるクセの文字だったから、美桜が書いたのかもしれない。


使い古された焦げ茶色の机上に刻まれた、真新しい『大キライ』の傷口。


見つけた瞬間に、私の心にも同じように『大キライ』と美桜の言葉で刻み込まれたような気がした。


目の前の文字がぐにゃりと歪む。



……泣いちゃダメだ。


本当に傷ついて、泣きたかったのは美桜のほうだ。


私がいつもこうやってすぐに泣き出すから、美桜は泣くことができなかったのに。


そう思っても瞼が熱を持ったように熱くなり、次々と溢れ出る悲しみを止める事が出来なかった。

< 150 / 345 >

この作品をシェア

pagetop