幼馴染みの期限
誰も居ない教室。
日が沈み始め、校舎も教室も全てが茜色に染まっていく。
その焼けつくような茜色の中で、夕日が届かない窓際の隅だけは孤独の果てのように真っ黒に見えた。
美桜がいない。
会えなかった。
……ただそれだけなのに、悲しくて、寂しくて、苦しくて。
世界でたった一人になったような哀しみの中、目の前の暗闇に落ちて溶けてしまえば少しは楽になれるのかもしれない……そんなことを思った。
ドロリと身体の下側に冷たく血液が流れ落ちるような感覚と共に身体から力が抜けていき、その場に崩れ落ちるようにしゃがみこんだ。
暫くまともな食事も摂らずにここまで走ってきた身体も、打ちのめされた心も、全てが限界を迎えていた。
しゃがんだまま動けず、すーっと暗闇に意識が引き込まれて落ちていく瞬間にーー
『……樹里!』
暗闇の奥から広海の声が聞こえ、力強く抱き締められたのを感じた。
……あぁ、私……一人きりじゃなかったんだ。
身体を包み込む温もりは、暗闇に一筋だけ射した光のように思えた。
その光にすがるように抱き締められた腕にしがみついたまま、私は意識を失った。