幼馴染みの期限
「あ、着いたね。広海、送ってくれてありがと」
「送るも何も、俺の家もここだからな」
だよねー。とアハハと笑いながら玄関に入ろうとした瞬間、広海に呼び止められた。
「待てよ樹里。今日お前は『失恋』したんだろ?」
あぁ……そうでした。
「ほら、来いよ」
その言葉に誘われるように、まだふらつく足を引きずって広海の側に向かう。
近づいたところでまたぐいっと手を引かれて、今度は正面からしっかりと抱き締められた。
二人ともコートを着ているのに、抱き合うとお互いの体温をしっかりと感じるのが何だか不思議だ。
そのまま身体を預けると、広海は私の身体を抱き締めたまま、まるで小さい子にそうするように何度も頭を撫でてくれた。
最初に失恋をした中2の時、広海は泣きじゃくる私をこうして黙って慰めてくれた。
それ以来、私が失恋する度に広海はいつも同じように慰めてくれるのだ。
これも、私のいつものパターンだ。
だけど、他の人にはこのことは秘密にしている。親友の才加も……誰も知らない。