幼馴染みの期限
「……長いな」
広海が出て行ってから10分。一向に戻って来る気配が無い。
入り口のドアを見ても、広海の姿は見えない。
「……食欲無くなっちゃったよ。広海のバカ」
「……無理やり連れて来たんだから、人さらいらしくずっと側にいろー。バカー」
置き去りにされた訳じゃないけど、一人きりだと、途端に心細い気持ちになってしまう。
もう食べる気持ちも失せてテーブルに突っ伏した私の横を、キャアキャアと騒がしく通りすぎる女の子達の声が聞こえた。
ーー「さっきの人、かっこよかったねー!」
ーー「ねー!王子様みたいだったよねー!!」
……王子様?どこに?
…………朝の牛丼屋に?
思わず顔を上げると、学生っぽい女の子三人組が私達が座っているテーブルの二つ奥の席に腰かけたのが見えた。
キョロキョロと周りを見渡したけど、王子様っぽい人はここにはいなかった。どうやら、店の外で見かけた人らしい。
『王子様』がよっぽどステキだったのか、女の子達は、座ってもまだキャーとテンション高くその話題で盛り上がっていた。