幼馴染みの期限
……それにしても、広海が王子だなんて。
生まれてからずーっと側にいるけど、私は王子だなんて一度も思った事は無いけどね。
だって、広海が本当に王子様だったら、私は隣にはいられないから。
コイツが知り合いでも無い人達からキャーキャー言われちゃうくらい格好いいヤツだって事を忘れちゃうくらい鈍感で無神経な女じゃないと、『幼なじみ』ってだけで広海の隣にはいられなかったんだ。
私なんて、魔法使いみたいなもんだ。
『王子様の隣に平気でいられるくらい、鈍感なヤツになーれ』って、自分で自分を誤魔化し続ける魔法をかけ続けてきたんだから。
魔法使いが王子様の隣に24年もいられたのは、奇跡だと思う。
広海だって、本当に隣にいて欲しいのは目の前のコイツじゃないってとっくに気がついているはずだから。
『幼なじみ』の魔法が切れた時、広海の隣にいるのは本物のお姫様だ。
ーーそう、才加みたいな。
才加は美人なだけじゃなくて、周りにも気を遣える優しい子だ。
今だって、自分の気持ちを押し殺してひたすら広海が戻って来るのを待っているんだろう。