幼馴染みの期限

『彼』が声を出す前に、視線に飛び込んできたのは、美桜とは明らかに違う足元だった。


少しだけ年季の入ったゴツめの黒いブーツとブルージーンズ。


次に聞こえてきた『男性』の声に驚いて顔を上げると、自分で予想していた位置で視線が合わない事に、また驚いた。


……広海より背が高い。


オフホワイトのニットの上にさらっと合わせてある黒のムートンコートも、またブーツと同じで年季が入っている。


だけど、この人が着ているとくたびれた感じに見えないのが不思議だ。



「……でかいな。あんたが門脇さん?」



広海が驚いた表情で見上げている。広海も180センチ近いから、人を見上げる事なんてめったに無いはずだ。



「はい。門脇 楓(かどわき かえで)です。沖田広海くんに……君が渡瀬樹里ちゃんだね。美桜の大切な幼なじみの。僕の事は楓って呼んでもらって大丈夫ですよ」



楓さんは、そう言ってニッコリと笑った。



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