幼馴染みの期限

「大丈夫。この時間は僕しかいませんから」


部外者が入って大丈夫なの?と思っていたのもお見通しらしい。また太陽みたいな笑顔を見せながら、こちらへどうぞと手招きをされた。


まるで病院のような無機質な景色の廊下を抜けて、楓さんはアイボリー色のドアの前で足を止めた。



「ここは工学部の研究室棟で、僕は環境工学科の都市環境システム工学の……って、あんまり余計な話をしても混乱するだけかな。ま、縁あって僕はここで助教という立場で働かせてもらってます。さ、中へどうぞ」


かなり省略をされたみたいだけど、今の私には詳しく説明されても半分も頭に入らなかったと思うから、かえって良かった。


研究室と聞いたので、資料なんかが雑然と置いてある部屋を想像していた。だけど、正面に見えるデスクはきちんと整頓されていて、余計なものは一切置かれておらず、簡易的だけど、ちゃんと来客が座れるようなスペースもあった。


「さ、どうぞ。二人とも、コーヒーでいいかな?」



「あっ、はい。大丈夫です」



促されて目の前の椅子へと腰かける。パーテーションに区切られた向こう側に、簡易式のキッチンが見えた。

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