幼馴染みの期限
〈3週間前〉戯れ言
「ねぇ、じゅりっち、街コン行かない?」
まちこん……?
「宏美さん、まず樹里に『街コン』の説明をしてあげてください」
才加の言葉にそこからなのー?と宏美さんは驚きの声をあげた。
はい、要説明です。と言いながら才加は血圧計片手にデイルームへと向かって行った。
朝の送迎が終わり、デイルームに利用者が集まると施設の中はにわかに活気づく。
私に『まちこん』なるものに行こうよと声をかけてきたのは、先輩介護士の笹岡 宏美さんだ。
ちなみに彼女は人の名前に『っち』を付けるのが好きで、彼女曰く「親愛の証よ」ってことらしい。
「こら、仕事しろ」
『まちこん』で頭がいっぱいになっていた私は、いつの間にか後ろに立っていた広海に両頬をぶにっと摘ままれていた。
「いひゃい!……何すんの」
「仕事中に無駄話してるほうが悪いだろ。お前今日リハビリ補助の日だろーが。源さんからのご指名だぞ、とっとと行け」
確かに話はしてたけど、手は動かしてたから!
洗い終わった湯呑み茶碗を片付けながら、去っていく広海の背中へ向かって思いっきり『ベー』と舌を出す。
途端にくるっと振り向かれて、ギロリとひと睨みされた。