幼馴染みの期限
「……美桜にも樹里ちゃんにとっての広海くんのように、ちゃんと支えてくれる存在はいたんだよ。だからね、そこで樹里ちゃんが傷つかなくてもいいんだ」


楓さんはゆっくりと言い聞かせるように、私に語りかけてくれた。


あの時の美桜の気持ちを思って、一瞬ざわめいた心が少しずつ凪いでいく。



「僕にはきょうだいがいるんだ。二つ下で梓(あずさ)って言うんだけど……美桜のことは、全部梓から聞いた」


「それに、美桜のお母さんやおばあちゃんからも教えてもらったんだ。梓が、少しずつ美桜の心に寄り添って、表に出れるように支えてくれたんだって」



「だから、美桜は今は普通の生活を送ってる。樹理ちゃんだってそうだよね?……二人がそれでいいと思っているのなら、無理に会わなくてもいいと僕は思ってたんだ」


楓さんは、ちらりと広海をうかがうように視線を送る。隣で広海がぐっと息を飲んで、身体が固くなった気配がした。



……楓さんは、美桜が広海を好きだった事まで知っているのかもしれない。



何か口を開きかけたのか、楓さんは、広海に向かって手を広げてストップをかけるように制して、また話はじめた。

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