幼馴染みの期限
「じゃあ、美桜には梓の気持ちを傷つける権利はあるのかって疑問に思った」


「だから、過去にこだわって、今何が……誰が大切なのかも分からなくなっているのなら、ちゃんと過去の気持ちにケリを付けるべきなんじゃないかな」



そう言いながら、楓さんはゆっくりと私に視線を合わせた。薄茶色の瞳が、物言いたげに揺れている。



……たぶん、美桜だけじゃなくて、楓さんは私にも同じ事を言いたいのだろう。



「ちょっとだけ説明が足りないような気もするけど、そろそろ時間切れかな。……広海くん、樹里ちゃん……覚悟はいいかい?僕は、さっきも話した通り、美桜には何も伝えていない。ただこの場に呼び出しただけだ」




「君たちの言うところの、『幼なじみの期限』が一日早まったから、っていう理由だけじゃなくて、結局明後日でも、その後でも、僕は美桜には何も伝えずに会わせたと思う」




「……だから、この話し合いがどういう方向に向かうのかは、僕にも分からないよ」


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