幼馴染みの期限
「10年前から……最後に美桜と話をした瞬間から……人を好きになる気持ちが分からなくなりました」



「……それでも誰かを好きになりたいって、なれるはずだって……そう思いながら、すぐ誰かを好きになったって騒いで、ずっとずっと勘違いしてきて……」



「広海は、優しいから……こんなバカな私を放っておけないだけなんです。私が、広海の優しさにずっと甘えてきただけなんです……」



私達の関係は、想い合っているとか、恋人同士だとか……そんな素敵なものじゃない。



『幼馴染み』で『腐れ縁』だって。そんな綺麗事のような言葉で飾り立てて、実際は私の我が儘で広海をずっと側で縛り続けていた。



……だけど、もう広海には大切な人がいる。



こんな関係は、今すぐに終わらせなきゃいけないんだ。



梓さんに……私のこの気持ちがどれだけ伝わるかは分からない。



だけど、ここまで連れてきてくれた広海のために、私は新しい一歩を踏み出さなきゃいけないんだ。



「私は、美桜に会いたいです」




私は、真っ直ぐに梓さんの目を見据えて気持ちを伝えた。



美桜に会いたい。



それが、嘘偽りの無い、今の正直な気持ちだから。


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