幼馴染みの期限
私だって、私が知らない美桜の10年間を広海が知っていたって事に驚いている。


だけど……不思議なんだけど、さっき広海が美桜と直接連絡を取っていたんじゃないかって勘違いした時のような、モヤモヤとした気持ちにはならなかった。



「……ずいぶん、都合のいい話ね」


はっ、と息を吐きながら、梓さんが吐き捨てるような口調で言い、広海を睨み付けた。


「口では何とでも言える。両方に誠実な態度を取ってるように言ってるけど、あなたはただこの子の側にいたかっただけでしょう?あの頃、どんなに美桜が大変だったのか知りもしないで、美桜の事も気にかけてただなんて、笑わせないで」



「……門脇さん。確かに俺は美桜がいちばん辛い時に美桜の側にいなかった。それに関しては、何の言い訳もできない」


ギリッと睨み付けながら話す梓さんの強い視線を、広海は真正面から受け止めていた。


「美桜の気持ちを蔑ろにしたつもりは無いけど、確かに俺は美桜の事を傷つけた。だから、会いに行って無理に傷口を開くような事はしたくなかったし……このまま会わない方がいいのかもしれないって思った時期もあった。けどーー、」

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