幼馴染みの期限
「それで良かったのよ。会いに来ないままで。わざわさ会いに来て、『あの時はごめんね』なんて涙流しながら手を握り会って昔の事なんて全部水に流せれば良かったとでも言うの?……ばかにしないで!」


梓さんは何か言いかけた広海の言葉を容赦なく遮って、興奮気味に捲し立てた。


「あなたはそれでいいかもしれない。だけど身勝手な理由で昔の感情まで掘り起こされて……謝られる方はたまったもんじゃないわ。ただあなたが……ううん、『あなたたち』がすっきりしたいだけよ」


「ーーおい、梓」


「楓は黙ってて」



怒りがこもったような強い口調で話しながらも、梓さんは決してヒステリックに叫ぶような事はしなかった。


その真剣な表情や視線からは、ひしひしと『美桜を守りたい』という気持ちが伝わって来る。



ーー私と広海と離れてからの美桜の葛藤を、梓さんが誰よりも……たぶん、家族よりも近い距離で見てきたはずで、



私を守ってくれた広海を私が無条件で信頼しているように、異性だとか同性だとかそんな事は関係無く信頼して、寄り添い合って……



そして、自然とお互いを必要とするように惹かれていったのかもしれない。


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