幼馴染みの期限
そこまで思った時、何故か一瞬だけ胸の奥がチクンと音を立てて痛んだような気がした。


その小さな疼きのような痛みの理由を考える間もなく、広海が話し出した。


「俺達は、美桜に会いに来たんだ。ーーそれに、俺の勘が間違いで無ければ、美桜も俺達に会いたいって思ってるはずだ」


唐突な広海の発言に怪訝そうな表情になった梓さんに向かって広海は静かに言葉を続けた。


「梓さん。確かに、こっちに来てからの10年、美桜のいちばん近くにいたのはあなたかもしれない」


「……だけど、俺達だってその前の10年間。あなたと美桜が出逢ってから過ごしてきた年月と同じ分だけ積み重ねてきた日々があるんだよ」


そう言った広海の表情は、さっきの梓さんに負けないくらいに真剣なものだった。


……やがて広海は、真っ直ぐ梓さんに合わせていた視線をふっと逸らして、梓さんが入って来たままで開け放たれたドアの向こうへと顔を向けた。




***



「なぁ、そうだよな?ーー『ナナツキ シイ』」







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