幼馴染みの期限
しん、と静まりかえった空間で、広海の凛とした声だけが響いた。


私も、楓さんも……そして扉の向こうの梓さんと美桜の呼吸の音すら聞こえて来ない。


まるで時間が止まったかのように、誰もが動けずにいた。



「ーーった」



暫くの間があって、ようやく小さな囁きが扉の向こう側から聞こえた。



梓さんのため息と、「……いいの?」と心配そうな声と、コツ……コツと響くヒールの靴音。



それだけで、私達は美桜が決心してくれたのだと悟った。



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