幼馴染みの期限
何も変わらない私とは対照的に、美桜は驚くほど女性らしくなっていた。


昔は女の子らしい髪型を嫌がる、というよりも嫌悪するくらいの勢いで、数センチ襟足が伸びただけで「気持ち悪い!」って言ってすぐに切りに行っていたくらいだったのに。


それに制服以外でスカートを履いているなんて、出会ってからの10年間、たぶん一度も無かったはず……



頭のてっぺんから爪先まで、何度も視線を泳がせる私を見ながら、美桜は困ったような表情で笑った。


その笑顔だって昔と同じはずなのに、きちんとメイクをしている顔を通して見ると、まるで別の人が笑っているような、そんな違和感が自分の中に沸き起こる。


「昔は、あんなに女の子らしい格好するの嫌がってたのに……って思った?」


思っていた事をピタリと言い当てられて、「ははっ……」と苦笑いが溢れ落ちた。


たぶん、私もさっきの美桜と同じように困った顔で笑っているはずだ。




……ただ私は美桜とは違って、10年前と何一つ変わらない顔で苦笑しているんだと思う。





「…………変わりたかったの」





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