幼馴染みの期限
「……まるで、全部自分だけが悪いみたいに言うんだな」


「広海……」


広海の綺麗なアーチを描いた眉が、ギュッと歪んで何か痛みに耐えているような、悲しげな表情に変わる。



罪悪感に胸がチクリと痛むけれど、口にした言葉は間違っていないと思う。



だって、私が向井くんの事をちゃんと美桜に相談できていたら、ケンカはしたかもしれないけど、決別するような事にはならなかったはずだから。



……それに、広海は自分の母親と同じように出版社で働きたいって言ってたじゃない。



編集になりたい私と小説家になりたい美桜と三人集まれば一冊の本ができるねって、ずっとずっとそうやって三人で夢を語ってきたのに。



「樹里。俺は、お前に夢を変えられたなんて思って無い。むしろ、お前を巻き込んで悪かったと思ってる」



「元々お前らがケンカ別れした原因の一部は俺だしな。……あの時は、本当に大切な事が何か分かって無かったんだ」



「もう、間違った守り方はしたくなかった。だから、樹里が望んでも望まなくても、たとえ美桜と同じ夢に向かって進まなかったとしても、側を離れるつもりは無かった。それに……美桜が望まなくても、こうしてきちんと会いに来るつもりだった」



……なのに、どうして、広海は夢を捨てた私を責めたり窘めたりしないんだろう。




ボロボロになった私の側にずっと居てくれるんだろう。



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