幼馴染みの期限
私が、利用者さんにここまでくだけた感じで話をすることはまずない。
源さん相手だと、何か素が出ちゃうんだよな……
ちなみに源さんって呼ぶのも若干アウトなんだけど。
「『源次さん』なんて固っ苦しいのは止めてくれ。『源ちゃん』でいいよ」と言われて、ちゃんはさすがに……と言うことで『源さん』と呼ばせてもらっている。
「頭が固いって言ってるんだよ。分かんないかねぇ。ま、勘違いしてるとこも樹里ちゃんの可愛いとこだな」
「勘違いしてるのは源さんのほうでしょ。私頭は固くないし、勘違いもしてないし。訳分かんない……です」
途中まで敬語を忘れて話していることに気がついて慌てて口調を戻す。……危ない危ない。
「おー、おー、頬っぺた膨らましてリスみたいになっちまって。ま、そう怒りなさんな。じーさんの戯言だと思ってきちんと聞いててくれりゃいいんだから」
……ん?そこって聞き流してくれ、って言うとこじゃないの?
「うちの孫も大きい孫も好い人見つけちまって暇なもんだからさぁ……ついつい樹里ちゃんを構っちまうんだよなぁ」
孫の大小はともかく、やっぱり源さんはじーさん目線で私をからかいたいだけみたいだった。