幼馴染みの期限
今度は、そんな美桜を見た広海の表情が、ふっと優しく緩んだ。
「……今の見ただろ?」
「良かったな、梓サン。美桜は "俺たち" とは『友達』に戻りたいんだってさ。ちゃんと自分の耳で聞いたろ?確認もできたし……今の表情見たら、さすがに美桜の気持ちも分かっただろうしな。呼ばれてもいないのに、わざわざここまで引っ付いて来たかいがあったな」
「ーーなっ」
そして、優しい表情から一転してニヤリと笑いながら広海が放った一言に、梓さんは真っ赤になって固まってしまい……とうとう反論の言葉も出なくなってしまった。
……さっきまで止められても、怒られても、お構い無しで喋ってた梓さんを黙らせるなんて……広海って凄い。
どうやら口の悪さでは、さすがの梓さんも広海には勝てなかったようだ。
好きだった人が、好きな人と、10年前の自分と同じように言い合いをしている。それを見て顔が曇るなんて、嫉妬以外の何者でもない。
それに気がついた梓さんに、広海は"俺に嫉妬してるんじゃないからな"と、ダメ押しの一言を放ったんだ。