幼馴染みの期限
『ナナイロ文庫』のコンテストに美桜は応募したけど、"ナナツキシイ" というペンネームを使って応募していた。


"ナナツキシイ" が美桜だと分かっていて、美桜が今でも小説を書き続けているのを広海が知っているなんて、広海ママが関わっているとしか思えない。 


みんなの心配や愛情を受けて、私達はこうして再会できたんだ。



「ねぇ、樹里。……私、前に樹里に言ったよね。『簡単に両想いになるお話なんてつまんない』って」


こっち(仙台)に来てから何ヵ月は学校に行ってなかったから、ずっと部屋に閉じ籠って小説ばっかり書いてた」


「最初はね、なかなか結ばれない恋の話をただひたすら書いてたの。……だけど、全然面白く無かった」


「『ナナイロ文庫』に応募したのはね、その頃に書いた話がベースになってるんだ。……あの時、書いて書いて書きまくって……だけど、結局最後に書いたのは、普通の恋の話だった」


「特に美人でもなくて、何か人より優れてる所もある訳じゃなくて……ごく普通の女の子が同じクラスの男の子を好きになって、少しずつ仲良くなって想いが通じ合うって話」



ーーありがちでしょ?



そう言って、美桜はフッと苦笑いを溢した。


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