幼馴染みの期限
「……帰るぞ」


広海が憮然とした表情で、私の手を掴んで歩き始めた。


「ちょ……ちょっと、広海」


戸惑う私に構うこと無く、広海は前を向いたままどんどんと進んでいく。



そんな私達を、美桜と梓さんはポカンとした表情で眺め、楓さんだけは何故かニコニコと手を振りながら見送っていた。



***


「ねぇ、広海」


「……広海ってば!」



手を引っ張ったままで後ろも振り返らずに歩いていく広海に、私は追い付いて歩くのがやっとの状態で、ようやく声を掛けられた時には、もう駐車場を歩いていて、すぐそこに広海の車が見えていた。



いつも二人で歩いている時は、私のペースに合わせてくれてるんだよね……



広海がこんな風にどんどん歩いていくのは、何か別の事を頭の中で考えている時だけだ。



羨ましいくらいスラリと伸びた長い足を間近に見つつ、今にも縺れて転んでしまいそうなくらいに短い自分の足を必死に動かしながら、そう思う。


私の言葉にハッとしたように振り返った広海は、車まで間もない距離だったけど、少しだけ歩幅を狭めて歩いてくれた。

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