幼馴染みの期限
「……良かったな、樹里。本当に良かった」



広海はそう言うと、繋いだ手はそのままに、もう片方の手でそっと優しく私の頭を撫でながら微笑んだ。



ーーほんとに、広海は昔っから全然変わらない。



他人の目から見た広海は、綺麗な顔をしているのに、愛想が無くて何を考えているのか分からない冷たい(ひと)……だ。



だけど、いつもは隠している感情を、私の前ではちゃんと表に出してくれる。



いつも私には、本音で向き合ってくれる。



だから私は、人を……人の感情を信じられなくなってしまった時に、広海だけは信じる事ができたから、また人を信じてみようって……そう思う事ができたんだ。



広海にだって迷いや不安はあったはすだ。



美桜の想いを受け入れられなかったのに、私を連れて再び美桜の前に現れる事に。



私達の心が再び壊れてしまいかねない、この再会に。


なのに、そんな不安や心配を少しも口にしないで、こうして私達が再び友達に戻れた事を喜んでくれている。

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