幼馴染みの期限

ーーそして今、


そんな優しい笑顔を、私だけに見せてくれるなんて……ずるい。



だって、何もかも終わってしまうのに。



その優しい笑顔も、今私の頭を撫でている優しい手の感触も、



そして、優しい広海の存在そのものも。



幼馴染みでいられなくなる明日からは……もう私だけのものじゃなくなってしまう。



幼馴染みを終わらせようって言ったのは、私からなのに……



それが寂しいって、嫌だって思うのは、なんて自分勝手な感情なんだろう。




***


「帰るぞ」


すい、と頭に触れていた手と繋いでいた手の感触が消えた。



寂しい。寂しい。寂しい。


嫌だ。嫌だ。嫌だ。



もう少しだけ……繋いでいたかった。触って欲しかった。



身勝手な想いが口から溢れそうになるのを必死に断ち切って、私は車に乗りこんだ。


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