幼馴染みの期限
あぁ……どうして私は、いつも気がつくのが遅いんだろう。
最近は、こんなに長い時間を二人きりで過ごす事なんて無かったから……
広海を意識する機会が無かっただけなんだって。
羽浦に着くまでは、暫くこうして一緒に車に乗っていないといけない。
だから、そのしなやかな手も、足も、綺麗な横顔も……
車の中は狭すぎて、見ないようにしようとしても、どうしても視界に入ってしまう。
……って、そんな事を考えてる時点でもう、私の頭の中なんて、広海の事だけでいっぱいになっているのに。
私が、過去の辛い事からただ逃げて、全て忘れようと必死になっている間も、広海だけはずっと美桜と逃げずに向き合ってくれていた。
それだけじゃなくて、一度完全に絶ち切った友情を引き寄せて、再び繋ぎ直してくれた。
"ありがとう"の言葉だけじゃ、とても言い表せない。
そんな伝えきれない気持ちが次々に心の奥底から沸き上がって来て、あっという間に私の心の全てを飲み込んでしまった。