幼馴染みの期限
生まれて物心もつかないうちから、私達はずっと一緒にいた。


私と広海は、生まれながらの『幼馴染み』。


『幼馴染み』以外の名前を持たない、広海との関係が終わってしまったら……


私は、一体どうなってしまうの?



今さら、広海のことを"友達"だなんて思えない。



……だって私は、


広海のことがーー





「着いたぞ」


頭の中でバラバラだった想いが一つに纏まり始めた瞬間、無情にも車は家に着いてしまっていた。


車から降りると、広海はいつものように私の名前を呼んだ。




「樹里……おいで」




広海は、いつものように『来いよ』と強引に呼び止めることはしなかった。



だけど私の身体は、いつもの台詞、いつものパターンを覚えていて、条件反射のように広海の元へと向かう。



ただ一つ……いつもと違うのは、今日は誰にも失恋をしていないし、広海に慰めてもらう理由が無いということだけだ。



戸惑いながら、迷いながら、一歩ずつ足を進めていく。



たどり着くと、広海は、まるで壊れそうなものを包みこむように、そっと私を抱き締めた。

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