幼馴染みの期限
「今日が、本当の幼馴染みの期限だ」


「……なぁ、樹里。お前は『側にいて』ってお前が言った約束を守る為だけに俺が10年も一緒にいたって……今でもそう思ってるのか?」


その問いかけに、首を横に振る。


広海の腕の中にいる私からは広海の顔は見えないけれど、私が首を振ったのはちゃんと見えたと思う。


フッ、と息を吐きながら、優しく笑った気配を感じた。


「よかった。それならもう、大丈夫だな。……失ったものを取り戻して来いよ」
 



「……樹里のこと……ずっと大好きだった」




広海は、一瞬だけギュッと抱き締めた腕に力を込めると、すぐに身体を離してそのまま振り返らずに自分の家へと帰って行った。



……呆然と立ち尽くす私を残したままで。



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