幼馴染みの期限
いつもなら、抱き締められると温かいって感じるはずなのに……今日は、不思議と広海の体温が感じられなかった。


いつも私が失恋した時に抱き締めて、慰めてくれたのは広海だった。


向井くんへの恋心を失ってしまったあの日から、ずっと。


冷たくなってしまった私の心を温められるのは、広海の優しさだけだった。


その優しさが、抱き締められた時の心地よい温もりが、力強い鼓動が、いつも私の心を癒してくれたのに……。



手袋を着けていない指先が、寒さでジンと痺れている。


同じように胸の奥が冷たくなって、痛みを伴った痺れが身体中にゆっくりと広がっていった。



もう、この冷えた心が温まる事は、二度とない。




『大好きだった』




そう広海に言われた瞬間に、分かってしまった。



広海が好きだって……想いを自覚した瞬間に……



私は、広海に失恋をしてしまったんだって。


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