幼馴染みの期限
幼馴染みの期限を過ぎても
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『……樹里、樹里』
暗闇の中から私を呼ぶ声が聞こえる。
私は、その声の主を生まれた時から知っている。
いつもは無愛想で口が悪いくせに……私を名前を呼ぶ時の声だけは、柔らかくて、温かくて、優しい。
……だけど、今その声は確かに近くから聞こえているはずなのに、不思議と彼の姿は見えない。
どうして?……と考えかけて、それもそうか……と思い直す。
だって、私は目を閉じて眠っているのだから。
『樹里』
『美桜が……いなくなったんだ。転校したって』
『美桜は、最後に何を伝えたかったんだろう……俺は何も聞いてやれなかった』
『俺は樹里にも、美桜にも、向き合わないで逃げてたんだ』
さらさらと頭を撫でられる感触が、やがて頬を包み込むような温かな感触に変わり……
『もう、守り方を間違えないから……』
その声と共に、ふわりと一瞬だけ、唇に柔らかなものが触れた。