幼馴染みの期限
幼馴染みの期限を過ぎても


***



『……樹里、樹里』




暗闇の中から私を呼ぶ声が聞こえる。



私は、その声の主を生まれた時から知っている。



いつもは無愛想で口が悪いくせに……私を名前を呼ぶ時の声だけは、柔らかくて、温かくて、優しい。




……だけど、今その声は確かに近くから聞こえているはずなのに、不思議と彼の姿は見えない。



どうして?……と考えかけて、それもそうか……と思い直す。



だって、私は目を閉じて眠っているのだから。



『樹里』


『美桜が……いなくなったんだ。転校したって』


『美桜は、最後に何を伝えたかったんだろう……俺は何も聞いてやれなかった』


『俺は樹里にも、美桜にも、向き合わないで逃げてたんだ』


さらさらと頭を撫でられる感触が、やがて頬を包み込むような温かな感触に変わり……



『もう、守り方を間違えないから……』



その声と共に、ふわりと一瞬だけ、唇に柔らかなものが触れた。



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