幼馴染みの期限
ーー『もう離れない……側にいたい』
その言葉と共に、ギュッと、手を握りしめる感触がしたーー
***
はっと目を覚ます。
目に飛び込んで来たのは、見慣れた天井。
……ここは、私の部屋だ。
病室の天井じゃない。
そして今、目を覚ました私は、14歳の私じゃなくて……
今日から24歳の私だ。
だけど、10年前唇に触れたはずの柔らかな感触は、ついさっき起こった出来事みたいに生々しく感じられた。
あの時ーー
10年前に肺炎を起こして入院していた時の事を、これまでも何度か夢に見た事はあった。
だけど、霞がかかったようにいつも記憶はぼんやりとしていた。
頭の中まで沸騰してしまったんじゃないかってくらいの高熱と、横になっているはずなのに目を開けただけで目眩がして歪んでいく視界。
何より、美桜に嫌われた事がショックで、暫くの間目を開くといつも泣いていた。
もし、自由に身体が動く状態だったら、私は目の前の窓から身を乗り出して、飛び降りてしまっていたかもしれない。
そんな弱い心を見せる私の側にいつも広海はいてくれて、何も言わずにずっと手を握りしめてくれていた。