幼馴染みの期限
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朝の送迎が終わり、デイルームに利用者が集まると施設の中はにわかに活気づく。
「じゅりっちー、今日は私と入浴介助だったよね?」
看護師が検温や血圧を測ったりと、バイタルチェックに忙しく動いている中で、宏美さんが後ろから私に声を掛けてきた。
いつも下ろしている私のボブの髪の毛は、今後ろで一つに結ばれている。
だから確認するまでもなく、これが『入浴介助のある日の私』のスタイルだ。
だから、何でわざわざ宏美さんが、私に確認の声を掛けてきたのか分からなかった。
「……はい、そうですけど……?」
……何かありましたか?と、振り向きながら、そんな感じで宏美さんに言葉を返す。
そして心配そうな視線でジッと見つめてくる宏美さんの顔を見た瞬間に、思わず身体がピキッと固まってしまっていた。
……実は昨日帰って来てから何をする気持ちにもなれず、ただぼんやりと過ごして結局ご飯も食べずに眠ってしまった。
昨日口にしたものは、朝に広海と入った牛丼屋で食べた定食だけ。しかも、それすら少しずつしか手が付けられなかった。
眠りも浅く、何度も10年前の事を夢に見て目が覚めた。
寝不足から来る、どうしようもない倦怠感。
顔色も悪く、目の下にはうっすらと隈ができている。
確かに、こんな状態じゃ声を掛けたくなっても仕方ないなと思った。