幼馴染みの期限
宏美さんの目が、まるで『大丈夫?』と聞いているみたいに心配そうに揺らめいている。


「……行きましょうか」



『大丈夫です』とも、


『心配しないで下さい』とも言えなかった。



その労る視線から逃げるように、浴室へと向かう。



途中でバイタルチェックの補助に入っている広海と目が合いそうになったけど、ブンッと首を振って顔ごと逸らすという、思いっきり不自然な目の逸らし方をしてしまった。



胸がズキズキと痛んで、思わず足が止まりそうになる。



……広海、笑ってた。



……何で?どうして?


……何で昨日の今日で、どうしてそんな笑顔になれるの?



一瞬しか見えなかったけど、今のは、仕事で見せるような事務的な笑顔じゃなかった。


心からの笑顔に見えた。



大好きな才加と一緒に仕事してるから?



それとももう、昨日で全部心の中のいろんな重りが取れて、スッキリとした気分にでもなっているんだろうか。



思わず笑顔が溢れてしまうくらいに。



本当の広海の気持ちは、広海に聞いてみないと分からない。分からないけど……




心からの笑顔を私以外(才加)の人に見せていた事に、私の心は自分でも驚くくらいに深く傷ついていた。



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