幼馴染みの期限
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「お疲れ様でしたー」
送迎と申し送りを終え、細々とした雑務を済ませた午後六時。
終業時間を待ち切れない様子でソワソワしていた何人かのスタッフは、時計の分針が12時の所に動いた瞬間に、足早にロッカールームへと消えて行った。
「じゅりっち、お疲れー。私、先にあがるから。お祝いは今週末にねー」
特に予定は無いはずの(ごめんなさい)宏美さんが、足早組と同じスピードでロッカールームへと消えて着替えて来ると、事務スペースで業務日誌を入力していた私の手元に、鞄から取り出したゴールドの小箱をポンと置いた。
「笹岡さん。職員同士のチョコのやり取りは禁止ですよ」
すぐにその様子を見ていた樺山さんが、宏美さんにキツイ口調で注意をする。
ニコデーでは、義理も含めて、バレンタインデーのチョコのやり取りを一切禁止している。
だけど、宏美さんは、樺山さんに向かってニヤリと笑うと
「違いますよ。これは、誕生日プレゼントです」
と言った。
「お先に失礼しまーす」
どっからどう見ても◯ディバと表面に書いてある高級チョコの箱を誕生日プレゼントだと言い張り、宏美さんは、足に羽が生えてんじゃないかってくらいに軽々とした足取りで玄関の方へと消えてしまった。