幼馴染みの期限
残された私達。


はっとして樺山主任を見ると、ぐぐっと眉間に皺を寄せながらも、必死で怒りを抑えているように見えた。



……宏美さーん……言い逃げとか、置き逃げとか、ほんと、止めてー。



それと、逃げて行った宏美さんの格好が、ふわんふわんとしたベージュのボアコートといい、コートの裾からちらりと覗く黒いレース素材のミニスカートといい、いつも私達と紫山で飲んだくれている時よりも数倍女子力が増している格好だったのも妙に気になった。


……デートかな。



予定が無いなんて決めつけて、ごめんなさい。……と、消えた背中を思い出して、とりあえず謝ってみた。



……そうだった。


今日は、私の誕生日だけど、世の中はバレンタインデーだ。



……恋人達の日……だったなぁ。



足早に帰って行った人達も、大切な人との大切な約束があるんだろう。




『あーあ。どうして恋人達の日に生まれたのに、私は恋に縁がないんだろう』



そんな愚痴を、一月ほど前に紫山で言った事を思い出して涙が出そうになった。



だって……今までの誕生日は、失恋してたって、恋人が居なくたって、広海が側にいてくれた。


才加も、宏美さんだって友達になってからは、いつも側にいてくれた。

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