幼馴染みの期限
……それなのに、今日はーー




「……瀬さん、渡瀬さん!」


ちょっと強めの口調で名前を呼ばれて、はっと我に返る。どうやら宏美さんが消えた方向を見たままぼんやりとしてしまっていたらしい。


「……すみません」


「疲れてるの?大丈夫?誕生日なのに、業務日誌の当番に当たっちゃうなんて、災難ね。……これは私からの誕生日プレゼント。あと毎年恒例のコレも」


そう言って、樺山さんは宏美さんが置いたチョコレートの箱の横に、クラフト紙でできた袋を置いた。


中にはケーキが入っているボックスと、500ミリリットルのペットボトルの大きさくらいのワインボトルが入っていた。


ニコデーに勤めているスタッフには、毎年誕生日に施設長からホールケーキが贈られる。


だから、樺山さんからの誕生日プレゼントがワインなのだろう。



……でも……どうして、樺山さんが私にプレゼントを?



そう疑問に思った私に、樺山さんが意外な事を口にした。


「沖田くん、異動願いを出したのよ。……これでやっとあなた達に色々言わなくても良くなったと思ったら、ほっとしたわ。やっぱり付き合ってるのを見て見ぬふりするのも、他の人達に示しが付かないしねぇ」


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