幼馴染みの期限
「だから、これはあなたへのお詫びも兼ねてるの。今まで沢山注意してごめんなさいね。ちょっとしたもので悪いけど、二人で楽しんで」


樺山さんはクスッと笑いながらそう言ったけど、私はあまりのショックに言葉が出てこなかった。



「……異動、願い……ですか?……広海が?」


言葉を絞り出すようにそれだけを口にすると、『異動願い』という言葉の響きに心がまた傷ついて、思わず顔を曇らせてしまった。


動揺している私を見て、樺山さんも私と同じように表情を曇らせた。


そして、申し訳なさそうに口にする。



「……ごめんなさい。もしかして、渡瀬さん……まだ聞いてなかった?」


確かに、『まだ』聞いてなかったけど……


だからと言って、このまま私が聞かなかった事にして広海に何も言わずにいたら……広海は私に異動願いを出した事を話してくれただろうか。


……いや、たぶん……話してくれないような気がする。


そして、私は何も聞いていないふりをしたままで、朝礼の時や掲示で広海の異動を知る事になるのかもしれない。


それに、樺山さんは大きな勘違いをしている。


「樺山さん……私、広海とは本当に付き合ってないんです……だから……誕生日をお祝いしてもらう訳には……」
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