幼馴染みの期限
私達はお互いの存在を大切に思っていて、ずっと一緒にいたいと思っていた。少なくとも、私はそうだった。


それなのに、いつも私達の関係は『腐れ縁』だと、そんな言葉で片付けられてきた。


その心無い言葉を受け止め切れなくて傷ついた心を、そのうち自分で『腐れ縁』だからと口にする事で無理やり傷口を塞いできた。


そう言ってこなければ、とてもやってられなかった。


特別でも何でもない縁だと。好きで一緒にいる訳じゃないと。


そう言っておかないと……


幼馴染みの期限が来て広海が離れてしまった時に、私は、一人で生きていけないような弱い人間になってしまう。


それが怖いと、耐えられないと思っていた。



でも、違う。一人で生きていくのが、弱い人間になるのが怖かったんじゃない。



……私は、広海を失う事だけが怖かったんだ。



「……ううん。やっぱり、渡瀬さんは『腐れ縁』を勘違いしてる。全然分かってないわね」



「何が分かってないって言うんですか?!」


ふっ、と笑いながら首を横に振った樺山さんを、思わず咎めるように声を上げてしまった。



そんな生意気な口調も、目線も、全てを受け流しながら、樺山さんは私に言い聞かせるように話をした。

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