幼馴染みの期限
「『(くさ)(えん)』はね、元々は『鎖縁(くさりえん)』っていう言葉だったのよ」



「……くさり……えん?」



くさり…………鎖?



意外な話に、頭の中で"くさり"をすぐに漢字に変える事ができなくて、思わず首を傾げてしまう。



「そうよ。腐った縁じゃなくてね、鎖のように強く結び付いた縁っていう事」


「本来はね、その人との間に丈夫な鎖のように、切ろうとしても切れない強い結び付きがあるっていう意味なんだけど……私はね、鎖縁ってこんな意味もあるんじゃないかと思ってるの」


「鎖って、輪と輪を組み合わせながら、ずーっと繋がっているでしょう?一緒にいる時間が長くなればなるほど、縁を繋いでいくのは難しくなっていくと思うの」


「単純に環境の変化もあるし、人間関係だって変わってくると思う。二人の関係を応援してくれる人ばっかりじゃないだろうし……年月が経てば経つほど……鎖が劣化していくように、繋がろうとすることを諦めたら、そこで縁が切れていくんじゃないのかなって」


「渡瀬さんだけじゃない。沖田くんだけでもうまくいかない。二人でここまで大切に繋いできた縁だから……今までずっと一緒にいられたんじゃないの?それって、結構凄い事だと思うのよ。だってあなた達、幼馴染みなんでしょう?恋人でも無く、夫婦でもなく、お互い何の約束も法的な拘束の無い中で繋がってこられたんだもの」
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