幼馴染みの期限
「合コンだと最初に『盛り上がらないなぁ』って思ってもすぐに帰れないでしょ?街コンなら移動もオッケーだし、進展がなさそうだったら……」
「だったら?」
「ただ美味しい店を食べ歩きするって楽しみ方もできるの。会費だけでだよ?お得でしょ。しかもね、今回の最初のお店は『Felicita』なんだよ!」
「うそー!!」
「メニューはディナーだって!どうよ?」
『Felicita』と聞いて俄然私のテンションがあがる。
イタリア語で『幸福』という意味の『Felicita』は、ヴィラをイメージしたお洒落な外観と吹き抜けのある開放的な雰囲気の内装が印象的な、羽浦市一有名なカフェダイニングだ。
羽浦の駅前商店街のすぐ近くにある『Felicita』は、職場からもまあまあ近い。
ランチの時はお得なランチメニューなんかがあったりして学生なんかでも気軽に利用できる感じだけど、ディナーは本格的なコースメニューで営業している。
実家暮らしで多少余裕はあるとは言え、安月給の身分では、めったにディナーメニューにありつくことなんてできないのだ。
やったー、やったーと二人で仲良くうかれていると、広海が「今回は食い気に気を取られて失敗するパターンだな」とボソッと口を挟んだ。
「ちょっと、ろみっち。じゅりっちならともかく、私は食い気には踊らされないんだから」
「ちょっと宏美さん、私そんなに食べてばっかりじゃないですよ。今回は『食』も『恋』もどっちも手に入れてみせます!」
「先に『食』を持って来てる時点で、もうアウトだろ」
「広海、うるさい!……だいたいねぇ、」