幼馴染みの期限
広海の家は共働きで、おばあちゃんが亡くなってからは、一人になる時間が多くなった広海の事を心配して晩ご飯を一緒に食べたり、そのまま家に泊まって朝ご飯を食べてから一緒に小学校に登校する日も少なくなかった。


でも、段々と来ない日が増えて……完全に来なくなったのは、いつからだったろう。


確か中学校に入って、広海の背が伸びてちょっとだけ男らしくなって、自分の事を『僕』と言わなくなった頃じゃなかったかと思う。


お母さんも最初は寂しがって広海ママに「遠慮しなくていいのよー」なんて声を掛けたりしてたけど、そのうち「思春期の男の子だもんね。仕方ないかぁ……」と言って諦めていた。


それから10年。


美桜と決別したあの出来事があってから、私達の距離は幼馴染みのそれに戻ったけれど、不思議と小さい頃のような密度では、お互いの家を行き来する事は無くなっていた。


ーー お互いの想いを伝えて、恋人同士になったあの日。


抱きしめられて、何度もキスをして、身体の内側から蕩けるような温もりを感じたあの時……


そう、あの時だ。


あの瞬間、本当に私の脳みそは、広海に蕩けさせられてしまっていたのかもしれない。


前々日からの緊張感がいけなかったのか、前日の寝不足が祟ったのか、それとも色んな事を考え過ぎて頭の中がショート寸前だったのか……



信じられないことに、私は広海の腕の中でぐっすりと眠りこけてしまったのだ。



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