幼馴染みの期限
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「……あんたたちって、ずーっと塞き止められてたダムみたいなもんだからね」
「一旦放流されたら、そりゃ、とてつもない勢いで流れていくわよ、そういうもんよ。……でも、しあわせなんでしょ?」
そこは間違いなくしあわせだって言える。私は顔を真っ赤にして、うん、と頷いた。
「はいはい。よく分かった。ごちそうさま。もうね、ずーっと何にも考えないで、行き着く所まで流されちゃいなさい。そしたら、ずっと樹理はしあわせなままでいられるからね。広海はちゃんと受け止めてくれる。大丈夫だよ」
「才加……」
「俺は、才加さんの深い愛に流されるより溺れたいです!!いや、むしろ沈んだままでいいです!!」
「うるさい。あっち行け」
シッシッと犬を追い払うような手つきで大型犬……もとい、大和くんを追い払う才加。
驚いた事に、私と広海が付き合い始めたのと同じバレンタインの日に、この二人も付き合い始めていた。
今だって、手だけは迷惑そうな感じで追い払っているくせにその表情はニコニコとしていて、決して嫌がってはいない事が分かる。