幼馴染みの期限
だけど、才加はそんな噂なんて全く気にしないでいつも堂々としていた。


嘘だらけの噂に押し潰されて、広海の優しさに頼りきってしまった私の中学時代と比べて彼女の強さは羨ましかったし、眩しいくらいに綺麗だった。


だから思ったんだ。噂が本当かどうかなんて分からない。分からないけど、私はこの人と友達になりたいって。


才加は私を親友だって言ってくれた。強がってたけど、本当は苦しかったって。いちばん辛くて苦しかった時に声を掛けてくれた私に救われたって。だからその過去は、今までは才加と私だけの特別な秘密のようなものだった。


……でも、二人だけの秘密だと思っていたのは私だけみたいだ。才加が自然と心を開いた大和くんに対する複雑な思いが、今私の胸の中にはある。


嫉妬?


ううん。そんな簡単な感情じゃない。才加が私や広海以上に心を許せる人ができたのは本当に嬉しいと思ってる。


私だって、今まで才加に話していないこと、話せなかったことは山のようにある。


私にも才加にも恋人という存在ができた。これからはもっとそういった『話せないこと』『聞けないこと』も増えていくんだろう。


……だから、もう才加には聞けないし、聞いちゃいけないんだと思う。


あの日……私が向井(むかい)くんとデートして告白されて動揺して……才加と広海に電話をして話を聞いてもらおうとした時に、紫山から寄り添うように二人が出てきた時の事を。
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