幼馴染みの期限
……黒髪は才加か。デカイ人……じゃなくて、大和くんが荷物……じゃなくて、宏美さんを担いで……これから帰るのかな?


「ちょっと、タクシーまではせめてお姫様抱っこしてあげなさいよ」

「嫌ですよ。俺のお姫様は才加さんだけです」

「そういう意味じゃない。ただでさえめんどくさいのに、担いで吐かれでもしたらもっと面倒な事になるでしょ」


二人の酷い(誰にとって酷いかは言えない)やり取りもちゃんと聞こえて、頭の中に入ってきて、ようやく酔いつぶれた私達を送る為に広海と大和くんが才加に呼ばれたのだと気がついた。


「ひろみ……ごめんねっ、っててて……」


いつの間にか、私の頭を支えるように広海が肩を貸してくれていた。謝りながら、その顔を見上げようとして頭を上げた瞬間に、ズキン!とこめかみに鋭い痛みが走った。


それをきっかけにして、頭の奥からも沸き起こるようなズキンズキンとした痛みが次々に起こる。


これは……完全に飲み過ぎてしまった。


「……いたい」


下を向いて頭を抱えてしまった私の状態を察してくれたのか、広海が通りがかった店員さんにお水を頼んでくれた。


「ほら。もうちょいここにいても大丈夫らしいから、これ飲んで少しでも酔いを醒ませ」


確かに、これじゃまともに歩ける気がしない。


こくんとうなずいて広海からグラスを受け取ると、ゆっくりと水を口に含んだ。

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