幼馴染みの期限

どうしてこんなコンプレックスの塊になってしまったのかな。


私にだって恋をして、毎日が楽しくて、好きな人に少しでも可愛く思われたくて毎日努力していた。


そんな時が確かにあった。


中学二年のあの冬の日を思い出す。
目の前が真っ暗になったような哀しみの中で、広海の存在だけが唯一の支えだったあの日のことを。


……あれから私は好きになった人に素直に気持ちを伝えることができなくなってしまったんだ。


「じゅりっち」


宏美さんに呼ばれてはっ、と我に帰る。


「ごめん。聞きにくいこと聞いちゃったみたいだね。さ、食べよ食べよ」


そう言って宏美さんは私に前菜から料理を取り分けてはい、と渡してくれた。


「宏美さんは……ほんとに優しいですよね」


私の事を心配してくれて、ずっと気にかけてくれているのを知ってる。


「何よ突然。誉めたって何にも出ないよ」


「いいんです。伝えたかっただけですから。ついでに言うと宏美さんめっちゃ可愛いです。大好きです」


「……何で好きな男にその勢いで迫れないかなー。いーい?あたしなんかに好きを安売りしないで、ほんとに好きな男のためにその言葉を使いなさい。好きってね、ほんとうに大事な言葉なんだからね!」
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