幼馴染みの期限
「うわ、キモっ。崇は私達の幸せを願ってるんじゃなくて、イベントの成功を願ってるだけでしょ?」
崇さんは市の職員だ。人が集まって盛り上がらないとイベント自体が成功しないので、職員の人が参加したり知り合いに声をかけたりというのはよくある話らしい。
今回の話も崇さん経由で回ってきたものだと宏美さんから聞いていた。
「で?崇も羽コンに混ざりに来たの?」
「勘弁してくれよ、佳純に怒られる。今日は裏方だって言ってるだろ」
そう言いながら、ラバーバンドを目の前に掲げて崇さんは笑った。
羽がついたデザインは一緒だけど、色は黄色で赤い字で大きく『staff』と書かれている。
崇さんは、去年の秋に結婚をしたばかりの新婚さんだ。何年か前、ニコデーに勤めて仲良くなった宏美『先輩』の家に初めて遊びに行った時、崇さんを紹介された。
あまりの格好良さにトキメキかけた私の恋心は「あ、崇彼女いるからねー」という宏美さんの容赦ないヒトコトであっさりと沈んでいった。
今思うと危うく恋に落ちかけた、じゃなくてがっつり落ちてたよね……
ほんと、私はあの時からぜーんぜん変わってない。
相変わらず惚れっぽくて、そしてその恋はまったく実らない。