幼馴染みの期限

「樹里ちゃん」


「はっ、はいっ」


過去の苦い記憶あれこれ……を思い出していた私を崇さんの優しい声が現実に引き戻した。


「俺はスタッフとしての仕事があるから、宏美と樹里ちゃんのことはサポートしてあげられないけど、職場の彼女いない若いヤツに何人か声かけて参加させたから、良かったら紹介しようか?」


「いーね公務員!紹介してよ」


そう食い気味に答えたのは私ではなくて宏美さんだった。


「おぅ、待ってろ。ウチの若いヤツらは良いヤツばっかりだからな」


にこりと艶っぽい笑顔を浮かべながら、崇さんは人混みの中に消えて行った。


もうすぐ羽コンが始まってから30分が経とうとしていた。


周りでは何組か雰囲気良さげに話をしているグループもちらほら見えたりして、こういう場でも要領よく動ける人とそうでない人の差がはっきり見えちゃうもんなんだなぁと思う。


私がしたことと言えば、宏美さんに好きですと告白して、何度も会っている既婚者の崇さんにときめいただけだった。


あ、もちろん『Felicita』の美味しいご飯はがっつり食べてるけど……


はぁー……何をやっているんだろう。

自分でも呆れてしまう。

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