幼馴染みの期限
「お待たせ」
崇さんが戻ってきた。後ろに付いて来た人達が、たぶん『ウチの若いヤツら』なんだろう。
うーっ、緊張する……。
実は私は人見知りだ。初対面の人に顔を会わせるのが恥ずかしくて何となくうつ向いてしまっていた。
「笹岡崇の妹の宏美です。兄がいつもお世話になってます」
宏美さんの挨拶を聞いたところで、出遅れた!とやっと気がついて、慌てて顔を上げて挨拶をした。
「っ……はっ、はじめましてっ。笹岡宏美さんの同僚の渡瀬樹里ですっ」
「……渡瀬?」
聞き覚えのある声が聞こえて、その方向に視線を移す。
崇さんが連れてきた人は3人。そのいちばん右側に見覚えのある人がいた。
グレーのVネックのセーターに黒のパンツを履いたモノトーンのそのスタイルが、私の記憶の中の学生服を着ていた彼の姿と重なった。
「……向井くん?」
あの頃短かった髪は少しだけ長く、少しだけ茶色くなっていた。
だけど、「そうだよ、久しぶりだね」と言って私に笑いかけたその笑顔は、10年前と何一つ変わっていなかった。