幼馴染みの期限
そのまま恵は仕事あがりの藤田くんとここで待ち合わせだと言ったので、慌てて帰り支度を始める。
「えー、何で?亮くんも樹里にありがとって言いたいって言ってたのに」
恵が藤田くんを名前で呼んでいることにすら落ち込んでしまう。こんな気持ちで会える訳がない。
「いいよ。お礼なら恵から今散々聞いたじゃん。もうお腹いっぱいだから帰るね!」
普通に会話してても二人が『付き合っている』ということを言葉の端々から嫌でも感じてしまう。
ほんとにお腹いっぱいだ。わざと茶化すように話しながら、ばいばいと手を振って歩き出す。
二人が一緒のとこなんて見たら……あげく二人ハモって『ありがとう』なんて言われたら、間違いなく涙腺が崩壊するってば。
私も初めて会った時から好きだったんだけどな。
……亮くんのこと。
まぁ、こんな風にさらっと名前で呼べたら、もうちょっと何とかなってたかもね。
……今心の中で呼んだだけでドキドキしたっつーの。
名前すら呼べないこの意気地のないところが、いつも失恋してしまう理由なのかもしれない。
いつも想いを口に出す前に好きな人と友達が両想いなんじゃないかな?と気がついてしまう。
後で後悔するって分かってるのに何故か全力で応援してしまい、二人はめでたく付き合うことになる。
……これが私のいつものパターンだ。
ファミレスを出て、即カバンに手を入れてスマホを取り出した。そのまま即履歴で電話をかける。
こんな時は友達に頼ろう。
失恋の底から引き上げてもらおう。
のびたがネコ型ロボットを頼るように、私には困った時や悲しい時に必ず慰めてくれる心強い味方がいる。
「……私『また』失恋しちゃった!慰めてー!!」