幼馴染みの期限

「よかったね、座れて」

……よかったのかな?

「まだ二人で移動してる人達って少ないみたいだね」

……だからカウンター席に余裕があったと。

「渡瀬はここ来たことあった?」


……ありますけど、カウンター席は初めてで……だから……


「なぁ、渡瀬どれにする?」


ケーキセットのメニューをのぞきこんでいた向井くんがそう言って顔を上げた。


だから距離がっ……ち、ちっ、近いっ!近いってばっ!!


「ねぇ渡瀬、百面相してないで俺とちゃんと会話して。俺、ずっと一人で喋ってるみたいじゃん」


「……む、かい、くん……ちかい」


「えっ、何?」


「………ちかい……」


「聞こえませーん」


……くっ。


「近いんだって!!」


思わず大声をあげると、店中の人達の視線が一斉に私達に向けられて、あまりの恥ずかしさに頬が熱くなった。



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